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【読了】「漫画・日本霊異記」ichida(著)

「漫画・日本霊異記」を読了。タイトルの通り、日本霊異記日本国現報善悪霊異記)のコミカライズ版です。

 最古の仏教説話集といわれる通り、仏教の教えを広める目的の話を集めたものとなっています。「因果応報」という考え方を教えるために、時に残酷だったり、下世話だったりする内容の話も含まれているようで、一方では、日本最古の怪談話ともいわれているようです。

感想としては、マーケティングツールとして「日本霊異記」を見ると、現代に通じる方法だなと思いました。提案時に、相手の興味を惹きそうで分かりやすい具体的事例を入れる、というのはよくやることですが、「日本霊異記」の目的(より広い層に対して因果応報の概念の周知させる)ことを考えると、様々な立場の登場人物の俗っぽい振る舞いとその結果を具体的に描くというのは、まさに興味を惹きつけるうってつけの方法だったのではないかと思います。

また、口コミで広がりそうな怪談話というのも興味深いです。現代の都市伝説を含め、怪談話などは口コミで広がっていきます。それだけ、人々の興味を惹きつけるということなのだと思いますが、そうした興味を喚起させるストーリーの中に伝えたい考え方を入れ込むというのは、とても戦略的だなと感じました。今でいうところのバイラルマーケティングの走りともいえます。

妖怪話や民間伝承なども、道徳的な話、禁止行為を伝えるような話が多かったりと、教育的・指導的色合いが強いなと感じることが多いのですが、怪談系の話の根っこの部分に、日本霊異記と同じような目的があるのだとすれば、何となく納得できるように思います。

古事記」「日本書紀」といった歴史書も、同様の機能を有していると思うのですが、これら(特に日本書紀)は、政治的な影響が強いともいわれていますし、読み比べてみるのも面白そうです。