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【話題】企業に対する有休消化の義務づけ


有休消化、企業に義務付け 長時間労働を是正 :日本経済新聞

有休が好きなタイミングで取得しやすくなれば嬉しいですが、有休取得率という数値を上げるためだけで、従業員にとって使い勝手が悪い、あるいは実効性に乏しいものになってしまわないかという点で気になります。

例えば、夏季休暇や年末年始の休暇を減らして、これまでと同じ日数を休みたければ有休を使いましょう、といったことを行うと(正式な制度にするとなると年次有給休暇の計画的付与になり、労使協定の締結や就業規則の改定などが必要になるのではないかと思いますが、あくまで任意という形にする)、単純な有休取得率は上昇します。が、従業員の負担は変わらないどころか、有休が減るという意味ではマイナスにすらなってしまいます。企業としては、有休取得率という数値が上昇するので、従業員の福利厚生にも気を遣っていると対外的に言えることになります。

また、義務という締め付けだけでは、外からの目が届きにくい中小企業(特に小規模企業)では仕組みとして機能しにくく、たとえ監査のような仕組みがあったとしても、形骸化してしまう可能性が高いのではないでしょうか。ABA(応用行動分析)でも、罰による問題行動への対処のリスクとして、禁止された行動を「隠れて行う」ことを学習してしまうことが挙げられていますが、同様のことが企業の行動にも言えるでしょう。

有休取得率を海外水準に近づけようという目標は素晴らしいですが、そのためには、数値的にしか判断できない決まり事を作るよりも、組織風土や社会的、文化的価値観の改革やメリット提示などを推し進められるような、もっと地道な取り組みの方が大切なのではないかと思います。