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【読了】「実践・職場のメンタルヘルス 地方自治体と大学との協働」

「実践・職場のメンタルヘルス 地方自治体と大学との協働」を読了。

 

実践・職場のメンタルヘルス―地方自治体と大学との協働

実践・職場のメンタルヘルス―地方自治体と大学との協働

 

 

タイトルから、メンタルヘルス領域での学と官の連携のプロセスが分かるかなと期待して読んだのですが、実際に何をやったかは最後の10ページほどで、残りは、前半が自治体職員に対する調査結果の解説、後半がメンタルヘルスの基礎知識の説明(おそらく研修内容をまとめたもの)という構成で、期待通りの内容ではありませんでした。

 

内容を読んでみると、メンタルヘルスの専門家というよりは自治体、あるいは企業の人事やメンタルヘルス担当者向けなのかなと思ったのですが、何の説明もなくオッズ比や信頼区間という用語を用いていたりと、読者層を定めきれておらず、ややちぐはぐな印象を受けました。

 

また、医学系の研究者が著者だからだと思われますが、心理支援に関する記述があまりなく、取り上げている方法も古典的な認知療法だったりと、対象が近くても、学問としての領域が違うとかなり認識にズレが生じるのだなということを感じました。

 

以前もどこかで書いたような気がするのですが、領域の違いという点では、選ぶ統計手法の違いが面白いですね。医学系の研究者は、ロジスティック回帰分析をよく用いるという印象があるのですが(逆に、心理系の研究者だとあまり用いる人を見ない)、診断が付くか付かないかがその後の方針を左右する医学では、0/1のように考える方が実務に適っているからではないかと思いました。一方、心理学の場合、構成概念のように目に見えないものを扱う傾向が強く、さらに、白黒で考えることをよしとしない文化があるため、連続変量で考えることが多いのではないでしょうか。心理の場合は、実務と研究の距離があまり近くないということもあるかもしれません。

 

実務の近さでいうと、マーケティングでもロジスティック回帰や判別分析のように、従属変数(目的変数)を0/1で考えることが多いですね。これも、購買の有無のように、実務に適っているからではないかと感じます。用いる手法は目的に合ったものでなくてはならない、という前提を踏まえても、こちらの方が(細かい理屈はともかく)直感的に理解しやすく、実務者に情報を伝えるにあたって便利なのかもしれません。